1972年、静岡県生まれ。助監督として映画界入り。
監督デビュー作『世界はときどき美しい』(06)は、
第19回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門に出品され、
ミニシアターでの小規模公開作品ながらロングランを記録。
DVDレンタルにおいて今なお好回転が続くカルト的な人気を持つ。
ミュージック・クリップやCM演出でも活躍中。

ぼくが青春期を過ごしたのは80年代です。
映画館のない伊豆の田舎に生まれたぼくが
月に一度だけ沼津まで繰り出して観ることのできた映画は、
どれも全国公開のメジャー作品でした。
東京のミニシアターは遠かったのです。
高級な映画体験ではなかったかもしれません。
それでも暗闇の中でスクリーンに像を結ぶ光を眺めながら、
ほんとうは自分の心を覗き込んでいるような、
恥ずかしながら思春期なりに切実な人生を刻んでいたように思います。
監督や脚本家といったスタッフの名で映画を選択する楽しみをおぼえだすと、
いつか自分も映画の仕事に携わりたいと思い始めていました。
映画が動く絵、「モーション・ピクチャー」であるなら、
全ての映画はアクション映画だと言えるかもしれません。
そして、観るものの心をも動かし、人を次なる行動へとかき立てる映画の力を、
松田優作さんがフィルムに刻んだ美しい姿を通して再認識する契機となればと、
それだけを信じて製作したのが今回のドキュメンタリー映画です。
劇場に足を運ぶ、ただそれだけのことが決して簡単なことでないのは承知しています。
ぼく自身、映画を見に街へ出かけるために大きなエネルギーを要します。
でも、ひとつの映画を発見し、行動を起こす。その熱量が光の束になり、
ひとすじ映画館の暗闇を走りぬけ、スクリーンに像を結ぶ。
この劇場体験をたいせつに思う気持ちが、今の自分を築いてくれたと思っています。
思い返せば、さまざまな映画に心を揺さぶられてきましたが、
ぼくの人生に一番影響を与えてくれたのは、「映画館」という空間そのものであったと、
強く思うこのごろです。
静岡シネギャラリーにうかがう日を楽しみにしています。(御法川修)
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