第一回ふじのくに映画祭2017を開催するにあたり、静岡シネ・ギャラリーでは、
2016年7月にご逝去された、アッバス・キアロスタミ監督の『ライク・サムワン・イン・ラブ』を上映いたします。
この作品は、ロケ地が静岡市ということもあり、静岡駅ロータリーなど見慣れた景色が登場いたします。
あわせまして、日本で初めて一般公開されたキアロスタミ作品『友だちのうちはどこ?』から、
遺作となった『ライク・サムワン・イン・ラブ』までを配給したユーロスペース代表の堀越謙三氏と、
『ライク・サムワン・イン・ラブ』ではキアロスタミ監督の通訳を務めた、ショーレ・ゴルパリアン氏のトークショーを開催いたします。
またとない機会ですので、是非ご参加ください。




information

上映日時:2017年24日(土)
15:00~16:55上映 (10分前開場)
※上映後トークショー(30分程度)予定

トークゲスト:
堀越謙三(ユーロスペース代表/プロデューサー)
ショーレ・ゴルパリアン(通訳/フィルムコーディネーター)

鑑賞チケット料金:
一般一律1,500円(当日1,800円)
会員一律1,000円(当日1,400円) (税込)

※限定55名、自由席、途中入場不可、各種割引・招待券使用不可
前売券完売時は当日券なし。
当日整理券への交換が必要です。

『ライク・サムワン・イン・ラブ』

【ストーリー】
80代の元大学教授のタカシ(奥野匡)は、デートクラブを通して亡き妻に似た明子(高梨臨)を自宅に呼ぶ。
しかし、明子は駅で彼女を待っていたはずの祖母のことを気にしていた。
翌朝、明子を大学へ送ったタカシを、婚約者ノリアキ(加瀬亮)は彼女の祖父と間違えてしまう。
こうして三人が出会ったことにより、物語は予期せぬ方向へと進んでいき……。

【解説】
『友だちのうちはどこ?』『桜桃の味』などで知られ、2016年7月に死去したイランの巨匠アッバス・キアロスタミ(享年76歳)が日本を舞台に描いたドラマで遺作となった作品。
デートクラブでアルバイトをする女子大生・明子と、80歳を超え現役を退いた元大学教授老教授タカシ、明子の恋人ノリアキの3人をめぐる物語。
明子の複雑な気持ちを表す印象的な冒頭のシーンは、JR静岡駅のロータリーで撮影された。

★第65回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品
監督・脚本:アッバス・キアロスタミ/プロデューサー堀越謙三、マラン・カルミッツ
出演:奥野匡、高梨臨、加瀬亮ほか/2012年/日本・フランス合作/ユーロスペース配給/109分/(C)mk2/eurospace

トークゲスト

堀越謙三(ほりこしけんぞう)氏

1945年東京生まれ。
1982年、渋谷・桜丘町にミニシアター「ユーロスペース」を開館し、ミニシアター・ブームの草分け的な存在となる。
2006年1月に円山町・KINOHAUSビル(元・Q-AXビル)へ移転し、リニューアルオープン。
日本で初めて一般公開されたキアロスタミ作品『友だちのうちはどこ?』から、遺作となった『ライク・サムワン・イン・ラブ』までを配給した。
『スモーク』(1995年/監督ウェイン・ワン)の製作にて、ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞。
2005年東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻の教授に就任。同年、第23回川喜多賞を受賞、
2009年、芸術文化勲章を受章、映画美学校代表理事。
ヨーロッパ映画を中心に映画配給・興行とともに映画製作にも積極的に取り組んでいる。

ショーレ・ゴルパリアン

イラン生まれ。
映画製作も手がけ、主な作品は『アフガン零年』(セディク・バルマク/2003年)『CUT』(アミル・ナデリ監督/2011年)など。
『ライク・サムワン・イン・ラブ』ではキアロスタミ監督の通訳を務めた。
79年に来日し、91年から通訳、翻訳家として映画界で活躍。イラン映画や中近東映画の翻訳・紹介に努めている。

シネギャラスタッフがおくる、追悼特集

日々、新しいスターが誕生するのと同じくして、素晴らしい監督、名優、映画人たちが悲しくも散っていきます。
それでも彼らの魂はスクリーンの上でこれからも生き続けるでしょう。
今回は感謝と哀悼の意を籠めまして、すでに亡き映画人たちを偲びます。

アッバス・キアロスタミ監督

イランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督が今年7月に亡くなりました(享年76歳)。
次回作の構想も聞いてましたが、残念ながら遺作となってしまったのが本作『ライク・サムワン・イン・ラブ』。

主人公アキコがタクシーで駅のロータリーを何周も回る印象的なシーンは、JR静岡駅で撮影され、2011年の冬(寒い日でした)の撮影に参加させてもらいました。
とは言え、キアロスタミと顔を合わせたわけではなく、プロデューサーの堀越謙三さんやユーロスペースの北條誠人支配人、メイキングを撮っていた池田千尋監督(『東南角部屋に階の女』など)と世間話したり、時々エキストラをやってみたりと、大したことはしていなかったのですが…。

それでも幸せなひと時でした。

若き頃、好きなミュージシャンのCDの「special thanks」に自分の名前が載っていたら、どんなに幸せだろうと夢見ていましたが、
まさかイランの巨匠の作品が初めて日本で撮影した映画のエンドロールに自分の名前を載せてもらえるとは夢にも思いませんでした。

ところで今年、静岡県映画興行組合で「ふじのくに映画祭2017」を開催することになりました。
私はすぐに、本作でキアロスタミ追悼上映を思いつきました(無事に企画が通りました)。
エキストラに参加された方、よき映画のファンの皆さんと一緒にキアロスタミを追悼したいと思います。
是非、ご参加ください。

ゲストに、本作のプロデューサーで配給会社ユーロスペース代表の堀越謙三氏と本作でキアロスタミの通訳を務められた、日本にとって「イラン映画の母」的存在と言われるショーレ・ゴルパリアンさんをお招きしてのトークショーを予定しています。
(東京じゃなくて、静岡の映画館でこんな凄いゲストが呼べるなんて嬉しい!)

(“福”支配人)

タクシーに乗ったアッバス・キアロスタミが静岡駅のロータリーを走り続けた
夜の想い出

2016年の夏、イランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督が逝去されました。76歳。次の作品の構想もあったと聞きます。
遺作となってしまったのが日本が舞台の『ライク・サムワン・イン・ラブ』。主人公アキコがタクシーでロータリーを何周もする印象的なシーンは、静岡駅で撮影されました。

個人的な話ですが、その撮影に立ち合わせてもらった夜のことをよく覚えています。見学の途中で一度だけ、通行人のエキストラとして参加したからです。

とはいえキアロスタミの演技指導を受けた!というわけではなく、ADさんの合図で家康像の前を歩いて、横断歩道を渡って、おわり。
数十秒の想い出です。問題はカットの声が聞こえなかったので「通行人」をやめるタイミングがわからなかったということです。その結果、自分ひとりだけが撮影後もずっと「通行人のその後」を演じ続けているような、奇妙な感覚が残りました。そもそも役作りなんてしなかったので、役をやめる方法だってわからないのです。

主人公アキコがロータリーを何周もするのは、そこで自分を待っている祖母の姿を見るためです。
ほんとうは直接会いたいのだけれど、アキコは誰にも明かさず高級デートクラブでアルバイトをしていて、これから客の元へ向かわなくてはいけない。

だからタクシーの窓越しに目で追うことしかできない。
自分の人生がどうしてこうなったのかわからないけれど、こうやって生き続けるしかない。
やがてタクシーはロータリーを離れていく。ウィンドウのアキコの顔に、二重写しに夜の灯が流れていく。

完成した映画を観て思いました。
私たちはみんな、役作りなんてしなかったので、役をやめる方法がわからなくなった人々なんだと。生きている間、それは続くのだと。
アッバス・キアロスタミ監督のご冥福をお祈りします。

(ウンノ)

フィリップ・シーモア
・ホフマン
『マグノリア』

常套句ですが、2年前にフィリップ・シーモア・ホフマンが46歳で亡くなったときは「惜しい人を…」と思いました。

代表作『カポーティ』をはじめ出演作にハズレなしの人ですが、一本選ぶとなると、ふっと『マグノリア』が思い浮かびました。

心に蓋をして生きてきた人々が、期せずして自身と向き合うことになる騒乱と恩寵の一日を描いたポール・トーマス・アンダーソン監督の初期代表作。
主人公格のキャラクターだけで10人近い群像劇なので、フィリップ・シーモア・ホフマンの登場シーンは決して長くありません。

しかも他のキャラクターたちは「疎遠だった父と会う」「警察勤務中に出会った女性と恋に落ちる」等それぞれにストーリーがあるのですが、ホフマン演じる看護士は唯一の「ストーリーのない役」。他の人々の物語に立ち会うだけです。

でも、それが「効いている」んです。囲碁の妙手のように、一見なんでもない場所に打たれた石の存在が、盤面全体を引き締めている。
トム・クルーズ(怪しい自己啓発セミナー提唱者)の怪演も、ジュリアン・ムーア(遺産目当て?の後妻)の感情の爆発も、フィリップ・シーモア・ホフマンがいるからこそ活きてくる。役者として得がたい才能です。
あぁ……惜しい人を。

(ウンノ)

ロビン・ウィリアムズ
『ミセス・ダウト』

離婚によって子供たちに会えなくなった父親が、女装して元妻の家庭へ家政婦として潜り込み、騒動を巻き起こすコメディ。


ロビン・ウィリアムズは、元夫ダニエルで女装した家政婦を演じています。
家政婦としていつしか家族の中で欠かせない一人となっていくダニエル。
ダニエルの父親としての成長物語を描いています。ロビン・ウィリアムズ本人も、きっとすごくいい父親で家庭人だったんだと感じられる作品だと思います。

やっぱりこの人は、人を笑顔にする天才なんだと感じずにはいられません。
この先ももっとたくさんの作品が観たかった!! 本当に残念で、寂しいです。

(ミニー)

アラン・リックマン

ハリー・ポッターシリーズで、スネイプ先生を演じたと言えば、映画を愛する方々には顔がぱっと浮かぶだろうと思います。
訃報が飛び込んできたときには、あまりに突然のことで、しばし呆然とした記憶があります。

『ダイ・ハード』で強盗グループのリーダーを演じたのが映画初出演で、その後続々と話題作に出演し続けました。

彼の素晴らしい演技力に独特の低音で甘い声。
ロマンスグレーの魅力的な俳優さんでした。

当館で上映した作品も何作品かありまして、
『暮れ逢い』『ヴェルサイユの宮廷庭師』、そして2017/2/4から公開予定の、『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』です。

遺作になったのは、『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』ですが、声の出演のみだったそうなので、『アイ・イン・ザ・スカイ』が、演技をしている彼の遺作となりました。
是非、劇場のスクリーンで、名優の演技を堪能していただければと思います。

(げ)

静岡シネ・ギャラリー

静岡市葵区御幸町11-14
サールナートホール3F
054-250-0283(劇場直通)