2017/2/18(土)
13:30~ 

『大地を受け継ぐ』上映

11人の子どもたちが福島へ向かった。
知られざる農家の孤独な“声”に心を揺さぶられる、
たった一日の食と命の体験。
わたしたちが変われば、世界は変わる。

2015年5月、東京。ごく一般的な16歳から23歳までの学生が集まった。初対面の人も多いなか、いささか構えてはいるものの、初々しい表情。まるで学校の課外活動のような気持ちで参加した。車内は、道すがらの風景をスマホで撮影する子、SNSに書き込みをする子、新しい友達とおしゃべりする子。平和で和やかな空気が流れる。そして、到着したのは福島県須賀川市。福島第一原発から約65km離れた一軒の農家だった。笑顔で出迎える、息子と母親。そして語り始められた彼らの四年間の物語。その孤独な“声”に耳を傾ける。それは生涯忘れられない、たった一日の食と命の体験に、心揺さぶられる瞬間だった――。


父を奪われ、土を汚され、それでもこの地で生きていく――
先祖代々、耕された土地を受け継ぐ、四年間の決意と軌跡。

2011年3月24日、福島県須賀川市で農業を営むひとりの男性が自ら命を絶った。原発事故を受け、地元の農業団体から農作物出荷停止のファックスが届いた翌朝のことだった。「お前に農業を勧めたのは、間違っていたかもしれない」。そう息子に言い残して。
それから四年。学生たちが訪れたこの農家の息子(樽川和也)は、母(美津代)とふたり、汚された土地で農作物を作り続けている。「福島の米や野菜は今までの値段では売れないし、売れても黒字になることはない」。農業だけで生きていくことが難しい現状だ。それでも自死した父や、先祖が代々受け継いできた土地を捨てるわけにはいかないと、彼らは土を耕し作物を育て続けている。
「いい土を作らないと、美味い野菜はできない」。そう言い続けてきた父。
毎年食べていた椎茸、ふきのとう、たらの芽、山菜は、いまこの土地には無い。
検査しているとはいえ、汚染された地で育てた作物を流通させる、生産者としての罪の意識。紛争解決センターでの裁判、東電からの補償金、身内からの批難…。次々に押し寄せる内外の葛藤。これは決して報道されることのなかった真実の告発、四年間の決意と軌跡。息子は言う。「これは風評じゃない、現実なんだ」と。
果たして、学生たちは何を想い、何を受け継ぐのか――。


出演:樽川和也 樽川美津代/井樫彩 井澤美采 石田佳那 一万田若葉 内田夏奈子 金子鈴幸
    樽見隼人 千葉航平 野月啓佑 宮田俊輝 矢部涼介/白井聡 馬奈木厳太郎
監督:井上淳一 
配給:太秦
公式HP http://daichiwo.wordpress.com/
Ⓒ「大地を受け継ぐ」製作運動体
2015年/日本/カラー/HD/86分




15:10頃~井上淳一監督トークショー

監督:井上淳一
1965年7月12日生まれ、愛知県出身。早稲田大学卒。大学入学と同時に、若松孝二監督に師事し、若松プロ作品に助監督として参加。90年、『パンツの穴・ムケそでムケないイチゴたち』で監督デビューする。以後、脚本家に転身。『パートナーズ』(10・上海国際映画祭)、『アジアの純真』(11・ロッテルダム映画祭)などの脚本を書く。2013年、『戦争と一人の女』を再び監督。慶州国際映画祭、トリノ国際映画祭ほか、数々の海外映画祭に招待される。また、09年の釜山国際映画祭では脚本作品『退廃姉妹』(青山真治監督)が企画マーケットでグランプリを受賞。現在、韓国・中国合作による、慰安婦をテーマにした監督作を準備中である。